機械式腕時計といえば1日あたり「−10秒 ~ +20秒」ほど時間がズレて当たり前。
ロレックスなどクロノメーター規格に準じた高級時計でさえ、日差は「−4秒 ~ +6秒」程度はあるのです。
しかし時計の使用状況によっては許容範囲をオーバーして日差が大きくなることがあります。
ここ最近、1日あたり1分以上も遅れるんだけど・・
故障かなぁ・・(困)
そのような場合は時計の専門業者に調整(オーバーホール)をお願いするとよいでしょう。
ところで精度調整とはいったいどのような作業をしているのでしょうか?
どうやって時間の進み(遅れ)具合を調整するの?
そこで本記事ではムーブメントの精度調整方法を紹介したいと思います。
(専門業者でない者が)腕時計の内部に手を加えることは故障のリスクが伴います。
これから紹介する作業をご自身で行う場合、「自己責任」となりますのでご了承ください。
歩度調整
歩度調整とは?
腕時計の精度(どのくらい正確に動作するか)を数値化したものを「歩度」といい、通常は日差に換算した値を使います。
つまり「1日あたり何秒進むのか、もしくは何秒遅れるのか」ということです。
私の腕時計は日差が「プラス5秒」ですね。
そしてこの日差を極力ゼロになるよう調整することを「歩度調整」といいます。
歩度調整のやり方
腕時計の裏蓋を開けると機械式ムーブメントを確認することができます。
今回の作業で注目するパーツは、赤色で示した「緩急針」と 青色で示した「ヒゲ持ち」です。
「緩急針」を動かすことでヒゲゼンマイの長さを変え、「ヒゲ持ち」ではテンプの振り幅を調整します。
これはとても繊細な作業であり、失敗すると時計そのものが故障しますので、本来は専門業者に任せるべきでしょう。
みなさんの中には「危険を承知の上で自分でやってみたい!」「自己責任で作業したい!」という方もいるでしょう。
そのような方にお伝えするとすれば・・
- 「ヒゲ持ち」の調整は非常に難しく、さすがに素人が手を出す範疇を超えているでしょう。
- 自己責任で作業するにしても「緩急針」の調整のみに留めておた方が無難だと思います。
- 作業中にピンセットがヒゲゼンマイに当たると腕時計が壊れることもありますので、細心の注意を払ってください。
危険!
作業は自己責任になる上、故障のリスクもありますので。
「緩急針」の調整はピンセット等を用いて行いますが、「緩急針」自体とても小さく、硬くて動かしづらいため大変な作業になることでしょう。
緩急針の操作 | 時計の動き | |
「ヒゲ持ち」側に近づけるよう動かす | → | 時間が遅れるよう調整される |
「ヒゲ持ち」から遠ざけるよう動かす | → | 時間が進むよう調整される |
歩度調整の流れ
ここでは実際に私が自己責任で「歩度調整」したときの流れを紹介します。
対象に選んだ時計は セイコーの「SARB035」というモデルです。
この時計の裏蓋はスケルトン仕様になっていて、中のムーブメント「6R15」が確認できます。
これから調整する「緩急針」もガラス越しに見えますね。
裏蓋を開けるためには専用工具が必要です。
裏蓋の周りにある溝に工具の爪を当て、反時計回りに回すと外れます。
これでムーブメントにアクセスできますので「歩度調整」の作業に入ります。
ちなみにこの時計は"時刻が遅れ気味"でしたので"時間を進める"よう調整します。
上の写真のように「緩急針」を矢印の方向にほんの少し動かします。
緩急針をどれだけ動かせば、精度がどれだけ変化するのか?
その加減が分からないよね・・
精度を確認する上で「時計歩度測定器(タイムグラファー)」があればとても便利です。
この機器を使えば時計の日差を即座に測定できますから。
私はこんな機器を持ってませんので、調整後は時計を数時間(もしくは1日)放置し、秒針のズレ具合を確認するという方法を取りました。
放置時間が長いほど秒針のズレ具合がはっきり分かりますよー。
調整後もあいかわらず時間が遅れ気味なら「緩急針」を同じ方向にもう少し動かしますし、逆に進み気味になってしまったのなら「緩急針」を逆方向に動かします。
この作業をひたすら何回も繰り返します・・
なんとも地道な作業ですが、一度やり始めたら満足いく日差に落ち着くまでつづけるしかありません。
まとめ
機械式腕時計の場合、ムーブメントの「緩急針」や「ヒゲ持ち」を動かして歩度調整を行います。
ただの素人である私はかなり気を遣いながら作業しましたが、なんとか満足のいく精度にまで調整することができました。(汗)
今回の記事で「歩度調整」とはどんな作業なのかをご理解いただければ幸いです。
改めてこの作業は自己責任になることをお伝えしておきます。
大事な腕時計のメンテナンスは専門業者に依頼する方が無難かもしれませんね。